弁護士 水谷 実
本年6月22日、当事務所の中山弦弁護士と一緒に取り組んだ刑事事件の裁判員裁判(名古屋地方裁判所刑事第3部係属)で、無罪判決を勝ち取りましたので、取り急ぎご報告します。
問題となった事案は、覚せい剤密輸事件です。
被告人男性は、渡航先の中国・上海で他人からスーツケースを受け取り帰国しましたが、そのスーツケースに入っていたリュックサックの背当て部分に覚せい剤が仕込まれていたため、覚せい剤を密輸したとして逮捕起訴されてしまったのです。
争点となったのは、①男性がスーツケースの中に覚せい剤が入っているかもしれないとわかっていたかどうか(故意)と、②責任能力の有無。
裁判所は「男性がスーツケースの中に覚せい剤が入っているかもしれないとの認識を有していたと認めることはできない」として、男性に無罪を言い渡しました。
この事件の特徴は、男性が長年にわたって統合失調症を患っていたという点でした。病気の影響もあり、本件が発生するまで長年にわたって複雑な事実経緯がありました。
そのため、弁護活動では、長年にわたる男性の行動と統合失調症との関係、そして、病気が男性の認識にどう影響を与えたのかを明らかにすることに力を注ぎました。
また、男性は捜査段階で自白をしていたため、弁護活動では、この自白が虚偽の自白であることを明らかにすることも大きなポイントになりました。この点についても、判決は、「捜査段階の自白は信用できない」と結論づけました。
検察官から控訴される可能性もありますので予断は許さない状況ですが、私も中山も無罪を確信する事件でしたので、無事、無罪判決をいただくことができて本当にほっとしています。
取り急ぎのご報告でした。
この無罪判決は、多くの報道機関で取り上げていただきました。
中日新聞6月23 日朝刊の記事をご紹介します(この記事は、中日新聞社の許諾を得て転載しています。)。